
ガス分析は事前に予測した通りの結果を得ることが仕事。まだまだ勉強は続きます
金子 洋一
Yoichi Kaneko
金子 洋一
Yoichi Kaneko
私が所属する横浜研究所には、高圧ガスに関わる様々な実験設備が備わっています。このような施設は国内でも多くはないため、様々な業種のお客様にご利用いただいています。ここでの実験や評価試験をきっかけに、お客様へのガス販売やガス消費設備の工事などの新たな取引が生まれます。そこが商社でありながら研究部門を有している巴商会の大きな強みとなっています。
私は入社以来、横浜研究所に配属されガス分析に携わっています。ガス分析には大きく2種類の業務があります。1つは自社で工事したガス配管やガス消費設備の品質保証を目的とした出張での検査分析です。当社は産業用ガスの販売と同時に、お客様の製造ラインにガスを送るための配管工事も受注しています。技術部による配管工事が完了した後、お客様の工場内に分析機器を持ち込み、その場でガス分析を行います。工事した配管やガス消費設備の内部状態に問題がないことを検査、分析したうえでお客様に引き渡します。例えば、半導体の製造工程では、配管内に存在する金属片などの微粒子、供給ガス以外の不純物ガス成分や僅かな水分が製品不良の原因となる場合があります。お客様にとっての不具合を未然に防ぐため、ガス及びガス配管内の不純物管理をする事は非常に重要な検査となります。
もう1つは、お客様からご依頼を受けて行う受託分析です。お客様が製造ラインを構築するにあたり、その製造ラインで使用するガスの種類、圧力や流量、さらには供給する配管の材質や部材に至るまで、最適な組み合わせを検証するための評価試験を行います。そこで得た評価結果や分析結果は、製造ラインの設計、ガス制御のシーケンス、安全対策やメンテナンス方法の確立など多岐に亘ります。考え得る組み合わせを検討するため、試験が長期間におよぶケースもあります。現在、担当するお客様との評価分析業務は、トータルで約3年間を予定する内容です。
ガス分析や評価試験で大切なことは計画段階でしっかり安全対策を考慮することです。実験では危険な状況も起こりえます。例えば取り扱うガスの中には自然発火しやすいガスや毒性の強いガスもあり、事前対策が不十分であれば大きな事故に繋がる危険があります。業界としても知見がない新しい材料やガスを扱う場合は、成分データを基に安全に扱える範囲を予測し、何重にも安全対策を設けます。その上でお客様が得たいデータをスムースに採取することが、「お客様のためになることをする」という社是を具現化することを考えています。
上司からは常々、「計画を立てたら分析業務はほぼ終わり」、あとは「予測通りの結果を得ることが仕事」と言われています。先の事を見据えて段取りすることができる上司をとても尊敬します。私はまだその域には達していません。まだまだ勉強不足です。
私は大学で生物学を勉強していました。ガスは全く未知の領域でしたが、新しい分野に挑戦したいと考えて巴商会に入社しました。配属後に受けた技術研修では、ガスやガス消費設備に関する基礎的な知識を座学で身につけました。しかし実際の業務で取り扱うと、知らないこと、初めて行うことの連続でした。
横浜研究所には優秀な方が多数在籍していますので、業務上でわからないことがあれば、詳しい方によく相談します。また一緒にお仕事をさせていただくお客様にも教えていただくことも沢山あります。気兼ねなくお話できる方が多いので、会話の中で生まれた疑問・質問をぶつけながら、知見を深めています。
自分自身、成長した手応えも感じます。最近は、お客様からこんな試験をやってみたいと言われた際に、すぐ自社の設備に置き換えた提案ができるようになりました。お客様から直接ご相談をいただくことも増えているため、信頼していただいている実感が持てて嬉しいです。
これまで作業環境測定士や特定化学物質作業主任者、所内に物を持ち運ぶための玉掛け免許などを取得しています。今後の目標は、研究所での業務に幅広く貢献できるよう多くの資格を取得し活用することです。
我々の業務は、化学の最先端に触れる仕事です。未来に起きることを一歩先に携わる機会があることが魅力です。また様々な分野に関われる事も面白い要素です。例えば、渋谷のクラブで踊るお客様の中で酸素濃度分析したことやTV局の依頼でガス分析したこともありました。私たちの生活に身近なところで活躍するガスには、限りない可能性を感じています。